2025.11.26
リブランディングで鍵を握ったのは“ファンの想い”。YAMAHA MUSIC SCHOOLが推進する、ファンとの共創
ヤマハ音楽振興会
森田 奈緒子さん・磯野 伸子さん
- ファンベース伴走
子どもから大人まで、幅広い世代に“音楽の楽しさ”を届けてきたヤマハ音楽教室。2024年に70周年を迎えた同スクールは、ブランド名を『YAMAHA MUSIC SCHOOL』へと統一し、節目の年に大規模なリブランディングを実施しました。そのプロセスで鍵を握ったのが、“ファンとの共創”です。
リブランディングを考えるにあたっては、生徒さんを始めとしたファンの想いに耳を傾けるところからスタート。ファンがYAMAHA MUSIC SCHOOLに感じている価値を明らかにし、それがタグライン「わたしが弾む場所。」につながり、その後の様々な具体施策にも活かされていきます。ファンへの傾聴から始まったリブランディングプロジェクトでは、常にファンの存在があり、ファンとの共創によって進んでいきました。そして、そのプロセスに、ファンベースカンパニーは共に考えるパートナーとして伴走しています。
YAMAHA MUSIC SCHOOLが、ファンとの共創に本格的に取り組むことを決めた経緯とは。そして、その取り組みがどのように社内やブランドを変えていったのか。YAMAHA MUSIC SCHOOLを運営する一般財団法人ヤマハ音楽振興会の森田奈緒子さん、磯野伸子さんにお話をうかがいました。聞き手は、ファンベースカンパニーの安藤淳と中畑友歌です。
迷いの中で投げかけられた「ファンの声を聞いてみては?」

森田さん:このリブランディングは、私たちにとって非常に大きなプロジェクトでした。年齢やニーズに応じて展開してきた各コースの見せ方を一新し、ブランド名を『YAMAHA MUSIC SCHOOL』に統一する。その背景には、ワンブランドにすることで、お客様の多様なニーズに応えながら、サービス内容をわかりやすくご提案し、お客様にさらに音楽を身近に感じていただきたいという想いがありました。
ただ、リブランディングの方向性は定まっていても、「ブランドとして何を大切にすべきか」「どんなメッセージを発信すべきか」という点は、社内でも迷っている部分があったんですね。広告代理店さんにゼロベースで提案をお願いする選択肢もありましたが、そこは自分たちで主体的に考えていきたいと思ったんです。
そんな折、さとなおさん(佐藤尚之)とお話しする機会に恵まれて。悩みを打ち明けたところ、「その答えを知っているのは、ファンの人たちですよ。ファンの声を聴いてみたことはありますか?」と提案をいただき、ハッとしたんです。その投げかけをきっかけに、ファンベースカンパニーさんへご相談をさせていただきました。


FBC中畑:音楽教室という事業の性質上、お客様である生徒さんとの距離は近い印象があります。それまでに、ファンの声を直に聴くような機会はあまりなかったのでしょうか?

森田さん:私たちヤマハ音楽振興会の役割は、コースのカリキュラムや教材を制作したり、講師の採用や講習を行ったりすることが中心なんです。スクールの運営自体は「ヤマハ特約楽器店」(以下特約店)となっていただいている楽器店さんが担っており、生徒さんと直接接する機会はほとんどないんですよね。
ただ、自分たちの活動をより良くしていくためには、生徒さんの声を直接うかがえる機会や仕組みを設けたほうがいいのではないか。そんな議論が、ちょうど社内で起こっていたタイミングでもありました。そのため、ファンインタビューの実施に関しては、社内でもすぐに理解が得られたんです。
ファンの想いから生まれた「わたしが弾む場所。」

FBC安藤:その後、教室の公式SNSなどを通じてご協力いただける生徒さんを募り、ファンインタビューを実施しました。ファンである、生徒さんたちにお話をうかがうのは初めての機会だったと思いますが、どのような感想を持たれましたか?

森田さん:一番印象的だったのは、私たちの音楽教室が、ファンの皆さんにとって“音楽や演奏技術を学ぶ場を超えた存在“になっていることに気づかされたことですね。
特に心に残っているのは、小さい頃から通い続けてくれている女子高生3人にお話をうかがったときのことです。先生への感謝や、仲間がいるからこそ頑張れるということを何度も話してくれて。「ヤマハは、自分にとって“帰る場所”なんです」と言ってくれた言葉は、忘れられません。

磯野さん:グループレッスンは、YAMAHA MUSIC SCHOOLならではの特徴のひとつです。レッスンや発表会で教室の仲間とアンサンブルを奏でるなど、“一緒に音楽を楽しむ”ことを大切にしてきました。だからこそ、生徒さんの言葉でその価値を改めて実感できたことは、私たちにとって大きな励みになりました。

FBC安藤:ヤマハ音楽振興会のYouTubeチャンネルでは、ファンである生徒さんへのインタビュー動画も公開されていますよね。「仲間と一緒に音楽を楽しむことを教えてくれた」といった言葉が印象的でしたが、講師や仲間との関係性は、YAMAHA MUSIC SCHOOLの大きな価値のひとつと言えそうですね。

FBC中畑:こうしたファンの方々の想いが、YAMAHA MUSIC SCHOOLのタグライン(ブランドメッセージ)「わたしが弾む場所。」にも込められていると思います。この言葉に辿り着くまでの経緯を、改めて教えていただけますか?

森田さん:ファンインタビューを通してファンベースカンパニーさんが、ファンの方々が感じてくださっている価値を言語化してくださったじゃないですか。講師や仲間と楽しい時間を過ごし、居心地の良い場所であること。ヤマハに通う中でいつの間にかレベルアップし、自分の殻を破るような成長を感じられること。キーワードとして「サードプレイス」や「ブレイクスルー」といった言葉が出てきましたよね。
そこで語られたエッセンスは、私たちが大事にしていきたいと考えていたものと重なっていて、自分たちが目指す方向性は間違っていないと確信することができました。なので、広告代理店さん向けのオリエンの中でも、伝えていったんですね。ヤマハを愛するファンの方々から寄せられた声であり、私たちが大事にしていきたいものとして。
そうして誕生したのが、「わたしが弾む場所。」というタグラインです。広告代理店のクリエイティブディレクターの方からも「ファンのリアルな想いを共有してもらえたことで、イメージが膨らみやすかった」「大切にしたい軸が明確だったので進めやすかった」と言っていただいたことが印象に残っています。

ファンのことを考え、ファンとお会いすることで広がった“共創”の輪

FBC安藤:リブランディングにおいても、講師や特約店の皆さんと一緒に考えていかれましたよね。

磯野さん:そうですね。やはり、講師や特約店の皆さんの存在があってこそのYAMAHA MUSIC SCHOOLです。だからこそ、同じ方向を向いて、手を取り合って進んでいくことを大切にしています。
そうした中で、ファンベースカンパニーさんにもご協力いただき、私たち職員をはじめ、全国の講師や特約店の皆さんに向けたファンベースセミナーを開催しました。リブランディングを進めるうえで、講師や特約店の皆さんにも改めてヤマハファンのことを一緒に考える機会を設けたいと思い、実施したセミナーでした。
ファンの皆さんが感じてくださっている価値を、講師や特約店の皆さんに共有し、そのイイトコロ(価値)を伸ばしていくために、ファンとどんなコミュニケーション(施策)を作れるのかを考えたり。さらに、作成途中のコンセプトの内容を共有し、フィードバックをいただくなど、リブランディングのプロセスにも積極的に関わっていただきましたね。

FBC中畑:2024年から2025年にかけて、全国各地でファンミーティングを開催しましたよね。

磯野さん:はい。全国5会場で実施しましたが、そのうち3会場は、地域の特約店さんが準備・開催してくださいました。当日の司会も特約店の社員の方が務めてくださり、講師にもご参加いただくなど、ファンミーティングそのものを共創している感覚がありましたね。
特に印象に残っているシーンがありまして。ある会場で、司会を務めた特約店のスタッフの方へ、生徒さんが感謝の言葉を伝えてくださったんです。「〇〇さんの笑顔が、いつも自分の支えになっている」と。その言葉が胸に響いたようで、スタッフの方が涙を流されていて…。それを見ていた私たちも、思わずもらい泣きしてしまいました。
ほかにも、ファンの皆さんからさまざまな想いやエピソードを直接聴かせていただきました。特約店や講師の皆さんからも「開催してよかった」「ものすごく励みになった」「元気をもらえた」といった声がたくさん挙がって。ファンミーティングの開催を通じて、私たち自身もたくさんの力をもらえたと感じています。


ファンとの“共創”を重ね、ファンとともに次のステージへ

FBC安藤:ファンミーティングでは、ファンの皆さんの想いに耳を傾けるだけでなく、一緒にファンミーティングを楽しみながら、とある共創をされたんでしたよね。

磯野さん:そうですね。ファンミーティングの中で「わたしが弾む場所。」であるヤマハを連想させる音のイメージをうかがい、YAMAHA MUSIC SCHOOLのサウンドロゴを作るためのスタート地点としました。その後、ファンから出た音のイメージをもとに、国内外の講師の皆さんからサウンドロゴ案を募集。約180作品もの応募があり、最終的なサウンドロゴを絞り込むプロセスでは、試聴会を開催したり、ファンの皆さんにも継続的に共創に参加していただきました。

森田さん:ファンベースカンパニーさんと取り組みを始めた当初は、ファンの方々との直接のつながりがほとんどないところからのスタートでした。今では、ファンであり、この取り組みを応援したいと言ってくださる方々が、共創に取り組んできた「講師の皆さん」「特約店の皆さん」はもちろん「生徒さん」の中にも少しずつ増えている実感があります。以前では考えられなかったような関係性が、ゆっくり育まれているのかもしれないですね。


FBC中畑:今回はたくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、これからのファンとの取り組みについてお聞かせいただけますか?

磯野さん:実は、こうしたファンとの取り組みを継続してきたことで、今年、ヤマハグループでの全社表彰で表彰されました。社長からも「自信を持って、この取り組みを進めていってください」と声をかけていただき、大きな励みになりました。
ファンの想いから編み出した「わたしが弾む場所。」を軸に、今後とも、ファンの皆さんと共に歩みながら、新しい挑戦を続けていきたいですね。そうすると、自然と輪が広がっていくし、結果として様々な共創が生まれていくんじゃないかなと思ってます。


インタビューをした人

Profile安藤 淳プランナー/コンテンツプロデューサー
映画誌編集、TV局勤務を経て当社に。様々な商品や企業のファンとお会いして、ファンの想いに触れることができるのが本当に幸せ。そんなファンの想いを多くの方に届けられるよう、イベント運営や映像での伝え方を模索中の毎日です。趣味の落語をやる際はファンのことを考える時のように登場人物に憑依しながら喋ってます。

Profile中畑 友歌ディレクター
広告代理店でコミュニケーションプランナーを経て、2022年3月にファンベースカンパニーに入社。誠実で裏表ないファンベースな考え方をより多くの企業・自治体へ広めたい!自分自身もファンベースな生き方をしたい!と思ってます。熱海在住で、NPO法人熱海キコリーズとしても森活中。ウクレレ・温泉好き。



FBC安藤:最初の出会いは、70周年に向けたリブランディングを進める中で、「ファンの皆さんからヤマハへの想いを聴いてみたい」とご相談をいただいたことがきっかけでした。当時、どのような課題感をお持ちだったのでしょうか?